研究課題/領域番号 |
22531063
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
村瀬 忍 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40262745)
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研究分担者 |
川島 卓 岐阜大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90161314)
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キーワード | 吃音 / 事象関連電位 / 言語理解 / 脳波 / N400 / P600 / 視覚刺激 |
研究概要 |
吃音者10名、非吃音者12名を対象に、言語刺激を視覚的に提示しながら事象関連電位を記録した。用いた言語刺激は、語から予測できる話題が文脈に一致しない動詞を文末に置いた逸脱文であった。収集したデータの中から、分析の基準を満たす非吃音者および吃音者各15名について、逸脱文に生じるP600およびN400成分を分析した。その結果、吃音者についてはN400が減衰していることがわかった。またP600については吃音者の事象関連電位に減衰はみられなかったものの、潜時が長くなっていることが明らかになった。さらに非逸脱文においては、非吃音者に比較して吃音者の反応潜時が長いことがわかった。吃音者の非吃音者との違いは、頭部の前頭で顕著であることも示された。 昨年度までの本研究では吃音者4名の特性を観察した。その結果、3名にP600が検出できないという結果を得ていた。しかし、今回15名の結果の加算が可能となったことにより、吃音者の言語処理にはP600は検出できるがN400が検出できないという、これまでとは異なった結果が得られた。今後、対象者を増やして、吃音の重症度との関連性を検討する必要があると思われた。 本研究では次のような結果が得られたと考えられる。成人吃音者は言語の処理速度が成人吃音者に比較して長いと考えられる。この結果は、吃音は運動の障害であると考えられているものの、吃音者の発話を伴わない言語処理には非吃音者の言語処理とは異なった特徴があるという、先行研究の結果を支持するものであった。また、本研究により、吃音者の言語処理の違いは、脳の前部ほど顕著であることもあきらかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、成人の有効データ数が十分に得られなかったため、本年度も成人のデータ収集をおこなった。したがって、計画に記載した小児の吃音者のデータ収集ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
小児の事象関連電位の記録については、これまで利用してきた成人用の課題では難しいことがわかった。したがって、当初の研究計画であった小児の記録は行わない。今年度は、計画通り、成人吃音者に対して言語訓練を実施し、言語訓練で改善のあった吃音者を対象に記録を行う。あわせて、今後の研究のために、小児用の実験課題について検討する。
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