研究概要 |
本研究の目的は、高機能広汎性発達障害青年における社会的コミュニケーション行動支援の理論的枠組みの構築、それらに基づく支援プログラムを開発し、その効果を検討することである。平成22年度は、理論的枠組みを整理・分析するために、国外・本邦における高機能広汎性発達障害青年を対象とした社会的コミュニケーション行動支援に関係する研究について、(1)青年において抱えやすい心理的課題、(2)社会的コミュニケーション行動に対する指導方法・指導プログラムと効果測定方法、といった視点から文献的に検討した。結果、ターゲット行動の明確化、および高次条件性弁別の枠組みからの分析の必要性が指摘された(井澤・山本・半田, 2011)。次に、高機能広汎性発達障害青年における社会的コミュニケーション行動の状態を把握するためのアセスメント・ツールの開発に向けて、高機能広汎性発達障害青年当事者(約50名)およびその保護者(約60名)に対する質問紙調査を実施し、そのデータを収集した。質問紙調査は、井澤ら(2007)を参考に、「I.関係作りスキル」「II.会話スキル」「III.関係の維持・発展スキル」から構成し、3件法による評定および具体的な問題を書き込む自由記述による回答を求めた。現在、データの整理・分析および追加データの収集を進行中であり、来年度にはとりまとめる予定である。最後に、事前準備的支援プログラムの開発(事例研究)に向けて、これまで実施してきた「大学生活準備支援プログラム(井澤・松尾,2008;松尾・井澤,2008)」「大学生における就労準備支援プログラム(田崎,2010(未公刊))」「就労準備支援プログラム(石津・田崎・井澤,2009)」の総括、新たに「消費者教育プログラム(香美・井澤,2010)」を実施した。それらを連続するシリーズ化した準備支援プログラムとしてさらに補完していく。
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