本研究では、日韓の深刻な非行化群を対象にして、彼らの心理的・情緒的問題性を標準化された質問紙を用いて評価する。得られたデータから非行生成メカニズムについて実証的に検討を加える。今年度は韓国法務省少年矯正局に2度訪問し、研究計画を練り、どのように得られたデータを活用していくかについて合意するに至った。 以下の質問紙を韓国側の少年院在院生約400名(男女200名ずつ)に実施した。 (1)Rosenberg版自尊感情尺度 (2)Buss-Perry攻撃性質問紙 (3)Attention Deficit/Hyperactivity Disorder Youth Self Report(AD/HD-YSR) (4)Learning Disorder Checklist (5)自己記入式非行歴尺度 (6)Socio economic Status尺度(社会経済的状況度尺度) (7)逆境的児童期体験尺度(ACE質問紙) (8)CBCL(子どもの行動チェックリスト) 少年院に在院している少年の基礎的データ(家族構成、学校での様子)を活用し、社会経済的状況についても比較検討することが可能である。また、韓国ではADHD(注意欠如多動性障害)や高機能自閉症などの認識が薄く、在院者の中にはそのような発達障害様の行動で、教官に理解されずに苦しんでいる少年も含まれる可能性がある。韓国法務省も在院者の発達障害の問題性については高い関心を持っており、それらの質問紙を多く採用することとなった。
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