研究課題/領域番号 |
22531072
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
松浦 直己 東京福祉大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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キーワード | 少年非行 / 発達障害 / 児童虐待 / 心理特性 / CBCL |
研究概要 |
本研究では、日韓の深刻な非行化群を対象にして、彼らの心理的・情緒的問題性を標準化された質問紙を用いて評価した。以下の質問紙を韓国側の少年院在院生約400名(男女200名ずつ)に実施した。得られたデータからは、日韓の少年院在院生で、逆境的児童期体験の深刻度で大きな差が検出された。また、自尊感情にも有意な差が検出された。 (1)Rosenberg版自尊感情尺度(2)Buss-Perry攻撃性質問紙(3)Attention Deficit/Hyperactivity Disorder Youth Self Report(AD/HD-YSR)(4)Learning Disorder Checklist(5)自己記入式非行歴尺度(6)Socio economic Status尺度(社会経済的状況度尺度)(7)逆境的児童期体験尺度(ACE質問紙)(8)CBCL(子どもの行動チェックリスト) 韓国の少年院在院者は日本のそれらと比較して、有意に自尊感情が高かった。欧米では非行が進行するにしたがって自尊感情が高まっていく報告例があるが、今回の調査結果はそのような先行研究を裏付けるものであった。逆に、日本の少年院在院者の自尊感情はきわめて低く、劣悪な養育環境や被虐待経験などが影響しているものと考えられた。また日本の少年院在院者では、男女ともにADHD(注意欠如多動性障害)やASD(自閉性スペクトラム障害)などの発達障害、摂食障害やうつなどの精神障害既往歴などが高率に報告されているが、韓国ではまだ少数例にとどまる。実務者らにこれらの精神障害が認知されていない可能性もある。 なお、今回の調査結果は、平成24年11月に開催される、日韓少年司法研究会で報告される予定である。また本研究結果に基づき、さらに少年院在院者の被虐待傾向と発達障害様行動特性についても調査していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
韓国法務省との円滑な連携とそれぞれの少年院の法務教官の全面的な協力により、調査は概ね順調に進展している。現段階ではデータ分析と論文執筆に力点を置いており、それぞれの国の背景や社会学的要因なども加味しながら分析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は日本と韓国の比較研究である。少年非行対策で苦慮しているのは世界各国共通であり、このような共同研究の輪を広げていく必要がある。現在、IJJO(国際少年司法研究所)の関係者らと共同研究の可能性を探りつつあり、IJJOのアジア大会(タイ、バンコク)の会議でも話し合う予定である。
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