研究の最終年にあたる本年度は,昨年度に実施した清音文字と濁音文字を含むそれぞれの単語の読みに関する評価実験に基づき試作した弱視用フォントの作成とその有用性を検証するためのモニタリング実験を実施した。 弱視用フォントの試作については、市販のフォントエディターを用いてひらがな・カタカナ(明朝体)の濁音文字・半濁音文字(は行・ぱ行)の濁点・半濁点部分をそれぞれ2倍程度(面積比4倍程度)大きくした弱視用フォントを試作し、その有用性を検討するためのモニタリング実験用の実験素材(平成23年度に実施した清音文字と濁音・半濁音文字の比較実験で用いた5つのペアの単語のひらがな・カタカナ文字カード)を作成した。次に作成した実験素材を用いて弱視用フォントの有用性を検証するためのモニタリング実験を実施した。被験者は平成23年度と同様の盲学校に在籍する高校2、3年生14名であった。 モニタリング実験では次の2つの課題を実施した。実験①では試作した弱視用フォントを用いて印刷した濁音・半濁音が含まれた10個(濁音と半濁音がそれぞれ含まれた5つの単語のペア)の単語を音読してもらい、その正誤を記録した。実験②では通常のフォントによる濁音文字と弱視用フォントによる濁音文字とを並べて提示し、どちらの文字が認知しやすいかを口頭で答えてもらい、それを記録した。 実験①の結果、昨年度の正答率(4.9/10)よりも高い結果(7.9/10)が得られた。また実験②では、弱視用フォントの方が見やすいと答えた者6名、違いはないと答えた者3名、通常のフォントの方が見やすいと答えた者5名という結果となった。 これらの結果から、飛躍的に視認性が高くなるとまでは断定できないが、試作した弱視用フォントが一定の割合で好意的に評価されたことが認められた。
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