研究概要 |
1.全国の特別支援学校約1200校(分校・分教室を含む)を対象とした,キャリア教育の推進状況及び課題,研修ニーズ等に関する質問紙調査を実施した。特別支援学校を対象としたキャリア教育の推進状況に関する悉皆調査はこれまで実施されておらず,本調査が初めてのものとなる。本調査の結果は,昨年度実施した教員個々を対象とした質問紙調査と併せて分析する予定である。 2.本研究の一環として昨年度実施した第1回キャリア教育推進者研究協議会の参加者が研修内容を踏まえて所属校において試行した事例を収集した。また,本研究に関するWebサイトを通して,全国各地の登録メンバー(143名)よりキャリア教育の推進及び研修に関する情報収集及び意見交換を行った。これらにより,教員及び保護者研修を実施するに当たっての重要な知見を得ることができた。これらの知見をまとめ,2012年6月に書籍として刊行する予定である。 3.第2回キャリア教育推進者研究協議会を実施した。全国各地より約60名の参加があり,それぞれ実践知を共有するとともに,組織的取組を進めるに当たっての課題や研修等の課題について8グループに分かれて協議を行った。協議内容について,KJ法によって重視すべき事項を整理した結果,全てのグループに共通する事項として(1)「キャリア概念の理解」,(2)「教員の意識改革及び共通理解」,(3)「組織的取組を進めるための戦略」,(4)「研修,実践等におけるねらいの明確化」の4点が挙げられた。これらは筆者が他所で実施した演習においても同様の結果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・2回の調査研究の結果から,研修ニーズ及び学校現場における課題を把握できた。調査結果に対応するコンテンツとして,また2回の研究協議会やWebサイト掲示板をとおして研修事例の収集をしており,知見が集積されてきている。また,その知見を整理し書籍として刊行する準備ができている。
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今後の研究の推進方策 |
・1年次に作成し提案した研究パッケージの内容は,そのまま適用するというよりも,それぞれの学校現場の教員ニーズや研修会の目的に応じて改変され,効果を上げているため,提案したパッケージそのものの評価を行う必要性はあまり感じられない。そのため,事例をとおして改変した研修内容のポイントや,実施することによって得られた成果の知見,キャリア教育研修の課題として明らかになった「組織的取組」や「合意形成」を図る上での「つまずき」,それを乗り越える「解決方策」等について整理することが,本研究の成果として重要であると考えている。このことは質問紙調査や研究協議会におけるアンケートの結果からも学校現場がより求めていることとして明らかである。今後これまで行ってきた研究協議や研修会のデータを分析し,研究をまとめる予定である。
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