本研究では,キャリア発達段階・内容表(試案)を基にした諸ツールを活用し、キャリア教育に関する研修パッケージを開発することを目的とした。 まず教員を対象とした質問紙調査を通じてキャリア教育の認知度及び研修ニーズの把握と研修パッケージの全体構造を検討するための知見を得、次いで、特別支援学校を対象とした調査票によって、教育現場におけるキャリア教育の認知度と推進にあたっての課題を明らかにした。これらの結果から、キャリア教育に関する理解は進んできているものの、competencyやキャリア発達等の中核的な概念の理解が十分ではないことが明らかになった。また、研修ニーズについては、最も重視していると回答されたのが、実践事例や具体的方策であり、意義と背景、定義に比べて、より実践的なノウハウが求められていることが明らかになった。さらに、特別支援学校及び特例子会社等の訪問による情報収集を行ったほか、登録制Webサイトを開設し、全国の教職員と意見交換を行った。収集した授業実践及び教員研修等に関する事例を整理し、書籍としてまとめた。 並行して、研修パッケージの内容について検討し、上記諸ツールをベースとした研修会を三年連続で施行し、参加者の9割強から肯定的な評価を得た。これらの知見を総合的に整理するとともに研修パッケージに関する評価を求めた。その結果、キャリア教育を推進していく上での課題として「組織的取組」「教員の意識改革」が挙げられた。また、解決方策のポイントとして、授業や研修会等における教員自身及び児童生徒にとっての「目的の明確化」、研修パッケージの中核となる方針として「言語化、対話の重視」が挙げられ、そのためには伝達型ではない、共同作業型のスタイルが求められることが確認今後の課題としては、キャリア教育の評価のあり方や、評価の活用によるキャリア発達支援の可能性が挙げられた。
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