当該年度に実施した研究の主要な成果は以下の通りである。 1.ダイナミカル・ブレイデッド・モノイド(dynamical braided monoid)を用いたダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成 ダイナミカル・ブレイデッド・モノイドというあるテンソル圏での適切な性質を持つ「代数」を用いて、ダイナミカル・ヤン・バクスター写像を構成する1つの方法を定式化した。本研究は、今後の研究において必要になる良い性質を持つダイナミカル・ヤン・バクスター写像を明らかにするという点で重要である。 2.等質概系(homogeneous pre-system)を用いたダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成. ある種の簡約型等質空間の代数的部分は等質系(homogeneous system)と呼ばれる。本研究では、これを一般化して等質概系という概念を新たに導入し、適切な性質を満たす等質概系からダイナミカル・ヤン・バクスター写像が構成できることを示した。これは、微分幾何学での主要な概念の1つである簡約型等質空間とダイナミカル・ヤン・バクスター写像が関係することを示したもので、今後、この方面の研究に1つの指針を与えると考えている。 3.面代数(face algebra)の構成. ダイナミカル・ヤン・バクスター写像から余擬三角な(coquasitriangular)面代数を構成した。これは、本研究で目指しているホップ亜代数を構成する際に生じるであろう困難に備えて、研究代表者らが構成した双亜代数とは異なる代数である面代数を予め構成したものである。この面代数の性質を研究して良い性質を持つダイナミカル・ヤン・バクスター写像を特定するなどという利用を考えている。
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