研究概要 |
当該年度に実施した研究の主要な成果は「ダイナミカル・ヤン・バクスター写像に関連して双対(dual)が定義できるテンソル圏を構成したこと」である.ダイナミカル・ヤン・バクスター写像に付随してホップ亜代数を定義するという本研究の目的を達成するには,その表現となって欲しい(テンソル)圏の各対象に対し双対(dual)を定義しなくてはならない.その前段階として,表現空間のみのなす(テンソル)圏の各対象に対し双対を定義する必要がある.本成果はまさにこれを達成するもので,ホップ亜代数を構成するための基本的な,しかし重要なステップとなる.[1]で構成した双亜代数の表現空間のみのなす圏の対象は集合であるので,これの双対を一般に定義することは難しい.そこで,この圏の対象を集合ではなくある性質を持つベクトル空間に変更し,ベクトル空間の双対を利用してこの圏の各対象の双対を定義できるようにした.しかも,この変更が[1]で構成したテンソル圏の一般化となるように工夫している.本実績報告書を記入している現在,本成果で得られたテンソル圏から定義される表現のなすテンソル圏(centralizer category)の各対象に対しても双対を定義しようと試みているところである. [1]Shibukawa, Y., Takeuchi, M. : FRT construction for dynamical Yang-Baxter maps, J. Alg. 323(2010), 1698-1728.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」の1つであるホップ亜代数に関する研究は,9に記載の通りおおむね順調に進展している.一方,「研究の目的」には,ダイナミカル・ヤン・バクスター写像から構成される面代数が弱ホップ代数となるための必要十分条件を求めることも含まれているが,これは,ホップ亜代数に関する前述の研究がうまく展開しなかった場合に備えてのものでもあったため,本年度はあまり行わなかった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究目的の達成のために論文[1]を参考にした.今後もこの論文を参考に本研究課題を推進していく.また,研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点などは,現段階ではない. [1]Etingof, P., Varchenko, V. : Solutions of the quantum dynamical Yang-Baxter equation and dynamical quantum groups, Commun. Math. Phys. 196(3)(1998), 591-640.
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