マクドナルド多項式の分解公式とプレシズム公式は、対称群のスプリンガー加群や、ガルシア=ハイマン加群の「次元の一致」とよぶところの組合せ論的現象に対し、その表現論的な解釈を与える際、根本的な役割を果たした。それらの公式の非可換化を行うことを試みている。非可換化と一口にいっても様々な可能性があり、どのような定式化を行うか定めることが問題の本質である。現在の目標は、これらの公式に内在する組合せ論的な骨格を抽出することであるが、幸いなことにバグルンドらによって得られたマクドナルド多項式の組合せ論的な公式が、その考察を進める助けになる可能性がたかい。もともとの証明は、対称関数の理論に基づく代数的な手法にたよったものであったが、それだけであれば非可換化に必要であろうと思われる、あるいは逆に、それに基づいて非可換化を行うための基盤となるべき構造を読み取りにくい。バグルンドらによる公式は、ヤング盤上での統計量を用いた完全に組合せ論的なものであり、それを用いて直接証明することができれば、非可換化の基盤とするべき構造を見て取ることができる可能性をもつので、現在その証明に取り組んでいる。
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