1)マクドナルド多項式のパラメータに1の冪根を代入すると、冪根の位数に応じて複数のマクドナルド多項式の積に分解する。これを分解公式とよぶ。マクドナルド多項式の分解公式は、ガルシア=ハイマン加群の次元の一致を、対称群の誘導表現を用いて解釈する際に、鍵となる性質である。一方、ハグルンドらによって、マクドナルド多項式のヤング図形をもちいた組合せ論的公式が知られている。この公式を用いて、分解公式の組合せ論的証明を与えることを目的とし、ある特別な場合に証明に成功した。証明は、2種類のヤング図形上の盤の集合の間に、全単射を構成することにより行われる。 2)二つあるマクドナルド多項式のパラメーターの一方に0を代入すると、ホール=リトルウッド多項式とよばれる対称函数となる。このホール=リトルウッド多項式の非可換化を考察した。現在のところ、すでにいくつかの非可換化が提案されているが、ここではそれらの先行研究とは別の視点から非可換化を考る。現在得られている非可換化は、ヘッケ環の表現の観点からのものと、ロドリゲスの公式を背景としたものに大別されるが、ここでは対称群のスプリンガー加群の組合せ論的構造を背景とする非可換化を与えることを目的とする。ホール=リトルウッド多項式は、スプリンガー加群の次数付き特性式となることが知られている。現在、スプリンガー加群の既約分解の様子を活写する形で非可換化の定式化を終え、その他期待される性質の証明を進めている。
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