研究概要 |
幾何学的な自己同型を持たない d-gonal な (射影直線への全射の写像度の最小値が d であること) 代数曲線 C で, 従来とは異なる形の加法公式を導出した. 通常, この種の公式は, 素形式 (prime form, Green 函数に近いもの) を sigma 函数と呼ばれる基本函数またはその導函数で書き下したものと, それの変数の定める点での曲線の代数的な座標の行列式とを結び付けるものである. しかし, 本研究ではこれを一般化し, 曲線 C の函数体に関する有理函数体上の Galois 群の作用を組み込んで素形式を一般化したものと, それの変数の定める点での曲線の代数的な座標の行列式とを結び付ける公式に拡張したものを得た. また, 楕円曲線についても次の様な結果を得た. 楕円曲線は 2-gonal であるが, 射影直線への写像度 3 を持つ射も存在する. こちらを使ふことで, 従来の加法公式と異なる形の加法公式が得られた. これは Matthew England, J. Chirs Eilbeck 両氏を山梨大学に招聘して共同研究して得られたものである. これを論文にまとめて発表した. また, 素形式を sigma 函数の導函数で厳密に書き下すことができるであらうことはほぼ確からしいが, まだ完全に書き下す手順が解明されてゐない. そこで, 松谷茂樹, John Gibbons の両氏との共同研究として, いくつかの代数曲線について, 具体的な記述を実行した. これも論文にまとめて発表した.
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