研究課題
基盤研究(C)
当研究はアーベル多様体のモジュライ空間のコンパクト化を、log幾何を用い、logアーベル多様体のモジュライ空間として構成することを目ざすものであった。今年度は、梶原健氏、加藤和也氏との共著である、楕円曲線のモジュライ空間のlog楕円曲線によるコンパクト化についての論文をとりまとめることができた。その概要は以下の通りである。1.log楕円曲線とレベル構造の定式化。2.log楕円曲線によるモジュライ関手の定式化。3.Deligne-Mumfordコンパクト化の復習とその上の自然なlog構造。4.自然なlog構造を付与したDeligne-Mumfordコンパクト化がlog楕円曲線のfine moduliであることの証明。特に、Deligne-Mumfordコンパクト化上の普逼log楕円曲線の二つの構成法とその一致について。5.log楕円曲線のモデルの理論。log楕円曲線のproper modelとそれからlog楕円曲線を復元する方法について。6.Drinfeld型レベル構造、Γ0(N)型レベル構造、stack等のvariantsについての簡単な解説。以上は、当該研究の最終的な目標である、アーベル多様体のモジュライ空間のコンパクト化を、1次元のアーベル多様体(=楕円曲線)の場合に実現したことに相当する。このように、まず1次元の場合をモジュライの構成まで実行したことにより、今後、高次元の場合に進む際、どこにどんな困難があるかを認識できたことは大きな成果である。例えばモジュライ関手の局所有限性は従来は簡単なことと思われていたが、実際1次元の場合に証明してみると、modelの詳しい理論も必要な非自明なことであることが判明した。今年度培われたこのような技法を、来年度以降の高次元の場合に役立てて行く予定である。
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Proceedings of the Japan Academy, Ser.A
巻: 86 ページ: 73-78
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Geometry and Topology
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