研究課題/領域番号 |
22540017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 信一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90114438)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 表現論 / 代数群 / 簡約群 / 対称空間 / 局所体 / 有限体 |
研究概要 |
連携研究者の高野啓児(明石高専)と共同でp進体上の対称空間の表現,つまり対称部分群に関するdistinguished 表現の研究を継続して行った. 任意の対称空間の既約表現がより小さい対称空間の相対cuspidal表現からの誘導表現に埋め込める,という部分表現定理は既に確立されており対称空間の表現の研究に役立っているが,この双対版,商表現定理も同様に成立することが期待される.この商表現定理の証明のためにはBernsteinの結果,Second adjointness theorem が有効であると見込まれるため,その結果の分析を行いつつこの定理の証明を目指した.しかしまだ証明は完成できていない. また Lustzig が定義した,対合上のKazhdan-Lusztig多項式(アフィンワイル群の場合)について研究を行った.この多項式は基礎体の2次base change から得られる対称空間に対応して考えられたものだが,一方多くの場合にそのような対称空間をp進体で考えたものの上の球関数も計算されている.そこでこのKazhdan-Lusztig多項式から得られるHecke環の球関数を計算してみたところ,特別な場合には対称空間の球関数と一致することや,重複度の (-q)類似がこの観点から説明できることがわかった.この研究もまだ未完成だが,このようにして上述のKazhdan-Lusztig理論,更にはその背後にある幾何学的理論と,p進対称空間の表現論,特に球函数論との関連が見えるようになってきている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対称空間の表現論に関して,商表現定理の確立,ならびにKazhdan-Lusztig多項式と対称空間の表現論との関係の研究はいずれも完成には至っていないが,徐々にその骨格が明らかになってきている.また新たな視点の発見などもあり,本研究計画の目標に向かって着実に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
相対cuspidal表現を軸にして対称空間の表現を研究してきたが今後もそれを継続する.具体的には2012年度に行っていた商表現定理の証明を完成させることを目標とする.その過程で対称空間のtempered表現についての知見を得ることを期待したい.さらにこれと並んで具体的な対称空間の表現の構成(例えばSteinberg表現)や,それを通してFriedberg-Jacquetの相対cuspidal表現の構成に関する予想についても研究する. また対称空間の表現論へのこれとは別の方向からのアプローチとして,2次base change から得られる対称空間に関係するKazhdan-Lusztig理論とp進群の表現論(特に球函数論)との関係の研究も2012年度に引き続いて行う.
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