研究概要 |
本研究は,表現論的な不変性や構造を背景にもつ数学的対象として特に行列式と調和振動子を取り上げ,それらのパラメタ変形によって生じる「ずれ」の構造を調べる.すなわち,α行列式と呼ばれる行列式の1パラメタ変形(およびその量子群類似)と非可換調和振動子と呼ばれる調和振動子の2パラメタ変形とを対象として,「元来の対象物」と「そのパラメタ変形」との間の差異を反映して現れる(変形パラメタを変数とする)関数について,それらの具体的な計算ないし特徴付け,及び背後にある表現論的構造による性質の記述を行うことを主たる目的とする. (1)スペクトルゼータ関数のs=kにおける値から生じるアペリ型数列を便宜上「k次のアペリ型数列」と呼ぶことにする.2次のアペリ型数列の母関数はテータ関数による表示を持つ(モジュラー性を持つ).4次のアペリ型数列の母関数はモジュラー性そのものではないが,それに近い変換則を持つことが分かった.この結果は沖縄で開催されたゼータ関数の研究集会で紹介した,より高次のアペリ型数列の「モジュラー性もどき」については現時点ではまだ明確ではない.また,アペリ型数列の満たす合同関係式について,それを含むより一般的な合同関係式の族が予想された.これについてUniversity College DublinのRobert Osburn氏の招聘に合わせて議論を行い,継続中である. (2)α行列式の生成するU(g1(n))-巡回加群の構造を司る(パラメタαの多項式を成分とする)行列について,そのトレースは対称群上のあるヤング部分群に関して両側不変な関数(「帯球関数」)によって記述できるようなαの多項式となる.この多項式のさらなる一般化を考え,その具体例の観察,特別な族の明示的な計算を行った.得られた結果の一部は九州大学で行われた組合せ論のセミナで紹介した.
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