研究概要 |
本研究は,表現論的な不変性や構造を背景にもつ数学的対象として特に行列式と調和振動子を取り上げ,それらのパラメタ変形によって生じる「ずれ」の構造を調べる.すなわち,α行列式と呼ばれる行列式の1パラメタ変形(およびその量子群類似)と非可換調和振動子と呼ばれる調和振動子の2パラメタ変形とを対象として,「元来の対象物」と「そのパラメタ変形」との間の差異を反映して現れる(変形パラメタを変数とする)関数について,それらの具体的な計算ないし特徴付け,及び背後にある表現論的構造による性質の記述を行うことを主たる目的とする. (1)スペクトルゼータ関数のs=kにおける値から生じるアペリ型数列を便宜上「k次のアペリ型数列」と呼ぶことにする2次のアペリ型数列の母関数はテータ関数による表示を持つ(モジュラー性を持つ).4次のアペリ型数列の母関数はモジュラー性そのものではないが,それに近い変換則を持つことが分かっていたが,これがいわゆるアイヒラー積分の一般化を用いて表示されることが分かった(若山正人との共同研究)この結果は沖縄で開催されたゼータ関数の研究集会や日本数学会で紹介し,また論文としてまとめた(受理済み).このアイヒラー積分の一般化に当たる関数じたいの研究や,より高次のアペリ型数列の母関数の場合の研究については,継続中である. (2)特別なパラメタの値に対するα行列式から定義されるリース行列式と呼んでいる相対不変式を用いて,いわゆるシューア多項式の類似・変形に当たるものを導入し,それがギャンベリ型の行列式公式(フックに対するシューア多項式を成分に持つ行列式による表示)の類似を持つことを示した.この結果は実関数論・関数解析学合同シンポジウムや日本数学会で紹介した.このシューア関数の類似物についてのさらなる研究や,特別な行列に対するリース行列式の研究については,継続中である.
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