研究課題/領域番号 |
22540033
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
都築 正男 上智大学, 理工学部, 准教授 (80296946)
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研究分担者 |
角皆 宏 上智大学, 理工学部, 准教授 (20267412)
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キーワード | L関数の特殊値 / IV型領域の保型形式 / 保型形式の周期 |
研究概要 |
研究代表者(都築)の昨年度の研究成果は次のようにまとめられる。 (A)IV型有界対称領域で定義されたスカラー値正則保型形式のフーリエ展開係数のある直行群の類群量指標による重み付平均に関して、その適切な正規化を提案した。これは、古典的な楕円モヂュラー形式の場合には、通用の正規化に本質的に一致するほか、2次のジーゲル保型形式の場合には予想されるフーリエ係数の増大度とも整合性を持っている。 (B)固定された重さを持ち、IV型領域に作用する数論的離散群を定義するために用いた計量格子の判別式部分群に対応するレベルも持つ正則保型ヘッケ固有形式のなす有限集合に、(A)にいう正規化されたフーリヱ係数の2乗を使って確率測度を導入することで確率空間を構成する。この確率空間上で、村瀬篤・菅野孝史の定義した完備標準L関数の中心特殊値で定義される「確率変数」の1次モーメントを考察し、重さが無限に大きくなる際の誤差項付き漸近公式を証明した。このような漸近公式は古典的な楕円保型形式のL関数のほか、その2次対称積L関数などについても知られていたが、今回は大幅に一般化された状況設定で、高次のオイラー積の中心特殊値を取り出すことに成功した、という技術的側面での成果を強調しておきたい。これら(A)、(B)の内容は、2つの研究集会で発表済みであり、現在4本の学術論文を準備中である。一方、研究分担者(角皆)の研究成果は次のようにまとめられる。 標点付き射影直線のモジュライ空間への置換群の作用の研究として、複比型ネーター問題に取組み、特に6次の場合に、幾つかの困難な場合を除いて、早稲田大学の橋本喜一朗氏との共著論文としてまとめ、査読つき国際集会報告集に掲載決定済である。 また、種数0に於けるモジュラー単数の類似物として複比を捉える観点から、それらを根とする多項式の具体的構成に取組み、経過報告的な口頭発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度では、当初の申請計画書の研究計画で詳述した第一段階はおおむね達成された。今年度は、さらに2次のジーゲル保型形式を特殊な場合とするより一般な設定で研究計画の第二段階ともいうべきステップを大きく踏み出すことができたため。一方で、「低ウェイト」ケースは当初予想していた以上の困難が見つかり、芳しい結果に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度得られた成果をさらに深化・発展させる。具体的には、今年度と同様な状況設定で、ヘッケ固有値(佐武パラメーター)についての条件を付けた場合に、完備標準L関数の中心特殊値の重み付平均の漸近挙動を考察する。さらに、重みばかりではなく、レベルを変動させた場合にも考察の対象を広げたい。
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