1.有理尖点平面曲線の特異点を解消したときの自己交点数について 本年度の研究では複素射影平面上の代数曲線Cで特異点として局所的に既約なもの(尖点と呼ぶ)のみを持つ有理曲線を考察した。このような曲線を有理尖点平面曲線と呼ぶ。Cを有理尖点平面曲線としてCの特異点の最小埋め込み解消を行う。これはCの逆像が正規交差因子になる最短のブローアップの列の合成である。この特異点解消によるCの固有変換をC'と書くことにする。本研究ではC'の自己交点数の上限を考察した。一般に有理尖点平面曲線C全体のなす集合を考えたときC'の自己交点数には上限が無いことが分かっている。しかしCの補集合の対数的小平次元が2で、特異点の数が2以下のときには上限があることが分かっている。本年度の研究では特異点の数が3以上のときにも上限があることを証明した。すなわち、Cをn個の特異点を持つ有理尖点平面曲線としたとき、もしnが3以上ならばC'の自己交点数は7-3n以下であることを証明した。少なくとも3つの特異点を持つ有理尖点平面曲線の補集合の対数的小平次元は2であることが知られているので、有理尖点平面曲線Cの補集合の対数的小平次元が2であればC'の自己交点数には上限があることになる。 2.特異点を3個持つ4次有理尖点平面曲線の特徴づけ 特異点を3個持つ4次有理尖点平面曲線が存在する。この4次曲線CはC'の自己交点数が上記1の研究成果で得られた上限に等しい例になっている。この4次曲線に関して次のことを証明した。すなわちCを3個の特異点を持つ有理尖点平面曲線としたとき、C'の自己交点数が-2であることとCが特異点を3個持つ4次有理尖点平面曲線であることが同値であることを示した。
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