本年度の研究では前年度に引き続いて特異点を4個持つ複素射影平面上の有理尖点平面曲線を考察した。ここで尖点平面曲線とは射影平面上の代数曲線で特異点として局所的に既約なもの(尖点と呼ぶ)のみを持つもののことである。以下Cを特異点を4個持つ有理尖点平面曲線とする。このような曲線の例は1つの5次曲線しか知られていない。まずCの特異点の極小埋め込み解消を行う。これはCの逆像が正規交差因子になる最短のブローアップの列の合成である。この特異点解消によるCの固有変換をC'と書くことにする。これまでの本研究の成果からC'の自己交点数が-4以上となるCが存在しないことが分かっている。前述の5次曲線の場合は自己交点数は-7である。前年度の研究ではC'の自己交点数が-5の曲線が存在しないことを証明した。本年度の研究ではC'の自己交点数が-6の曲線が存在するのかどうかを調べた。このような曲線Cが存在すると仮定するとCの補集合上に一般のファイバーが射影直線から何点か除いたものであるファイブレーションを構成できる。次にこのファイブレーションの存在を仮定するとその構造から、いくつかの既約2次曲線と直線の特別な配置を射影平面上に構成できる。この平面曲線の配置はCの特異点の種類により多くの可能性があるが、3個の特異点の重複度列の1より大きい重複度の最小値がそれぞれ2である場合には配置が実在しないことを示した。このようにして特異点を4個持つ有理尖点平面曲線CでC'の自己交点数が-6で3個の特異点が上記の条件をみたすものは存在しないことを証明した。
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