研究実績の概要 |
最終年度である今年度の研究では,初年度に見つけたReye合同型のカラビ・ヤウ多様体とそのフーリエ・向井対の導来同値性に関する証明の整理を行い,それによって線型双対と呼ばれる同様な事例との対比を明らかにすることを行った.線型双対の枠組みに当てはまるカラビ・ヤウ多様体の対は互いに双有理となり,背景にある導来圏の幾何学は(3次元の場合)一般論によって研究されている.Reye合同型で見つかった対の場合,線型双対ではないため導来同値性の証明はとても困難で,個別の幾何学に依存する部分が多く存在する.線型双対との対比が成立する部分と,ずれが出てくる部分を整理することによって将来の一般論へ向けた基礎付けが得られた. また本研究では,導来同値なカラビ・ヤウ多様体の対が,ミラー対称なカラビ・ヤウ多様体の周期積分の大域的な性質に反映して現れる現象に着目した研究を継続して実施したが,今年度は,これまでの成果をまとめて,今後の発展に資することを目指して,1つのサーベイ論文に整理して発表した(「Mirror symmetry and projective geometry of Fourier-Muaki partners」細野忍・高木寛通著).サーベイ論文では,K3曲面の場合の一般論と具体的な例から説き起こし,グラスマン多様体G(2,7)の線型切断とパッフィアン多様体Pf(7)の双対線型切断の,導来同値性とミラー対称性,そして,その延長線上に自然に登場するReye合同型のカラビ・ヤウ多様体とそのフーリエ・向井対と言う形で本研究成果の位置づけを与えた.また,K3曲面とカラビ・ヤウ多様体の2つの事例それぞれについて,ミラー対称なカラビ・ヤウ多様体の周期積分の大域的な性質も収録し今後の発展に備えた.
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