研究概要 |
鎖複体(Xi, di)は d2=0 をみたす列である。Kapranov はそれを一般の N>1に対して、dN=0 をみたす列、N鎖複体という概念を導入した。その後、Dubois-Violett はN鎖複体での一般化したコホモロジーに関しての諸結果を出している。今年度の本研究で、N鎖複体上のホモロージー代数を、ホモトピー圏、三角圏の立場から研究を行った。まず、アーベル圏A上のN鎖複体の圏CN(A)は、写像錐が定義できて Frobenius 圏になっていることを示し、そのホモトピー圏KN(A)が三角圏になっていること示した。そこで、一般化されたコホモロジーを保存する擬同型射を考えることによって商圏を考え導来圏DN(A)が定義できることを示し、それが射影的鎖複体のホモトピー圏と三角圏同値であることを示した。さらに、従来の鎖複体の導来圏も含んだ、様々なNに対して導来関手を定義できることを示した。その上で、A が無限直和を持ち、射影的コンパクト対象によって生成されるときには、A 上の写像のN-1列を対象とする圏MorN-1(A)上の通常の導来圏 D(MorN-1(A))と三角圏同値にあることを示した。これを次数環R上の次数加群圏に適用し、次数R加群圏GrModRのN鎖複体の導来圏とMorN-1(GrModR)の導来圏が三角圏同値であることを示した。さらに環 R 上の加群圏の場合には、R 加群圏のN鎖複体の導来圏と N-1次上三角行列環 TN-1(R) 上の導来圏が三角圏同値であることが分かった。 この他の結果として、奇素数次元の Gorenstein 孤立商特異点は、多項式環への巡回群の作用による商であることを証明した。
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