研究概要 |
(1)Xを非特異射影多様体とし,D(X)をX上の連接層のなすアーベル圏の有界導来圏とする.そしてD(X)は完備な強い意味での例外列をもつとする.その例外列の直和対象をEとし,Eの自己同型環をA,A上の有限生成右加群のなすアーベル圏の有界導来圏をD(A)とする.このとき,Bondalの定理より,D(X)とD(A)は完全同値となる.この完全同値を与える関手は,D(X)からD(A)へは,RHom(E,・)という関手であり,D(A)からD(X)へは,A上右からEを左導来テンソルするという関手である.特に,RHom(E,・)をとろた後で,A上右からEを左導来テンソルすると,D(X)上の恒等関手と同型になる.今年度は,これからスペクトル系列を引き出し,幾つかの例に適用してみた.例えば,Peternell-Szurek-Wisniewskiの論文「Numerically effective vector bundles with small chern classes」の中で,Beilinsonのスペクトル系列を使って,ベクトル束Fと擬同型な複体を求めている部分があるが,この部分に,上記のスベクトル系列を適用してみた.結果,Beilinsonのスペクトル系列を使った場合より,簡単な複体が得られることがわかった.上記のスペクトル系列では,右A加群の射影分解を求めるという手間がかかるが,射影空間上のみならず,完備な強い意味での例外列を持つ多様体上でも適用可能であるため,さらに色々な例に対して計算していきたいと考えている.(2)Happel-Reiten-Smaloの論文「Tilting in Abelian Categories and Quasitilted algebras」のProposition 3.2をt構造付き三角圏に関する命題として捉えなおして証明を与えた.なお,この捉えなおしでは,Proposition 3.2のif partに対応する命題に,ある仮定をつけていることになる
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