研究実績の概要 |
Peternell-Szurek-Wisniewskiは,論文「Numerically Effective Vector bundles with Small Chern Classes」において,射影空間上のネフなベクトル束で,第1チャーン類が2以下のものと,3次元以上の2次超曲面上のネフなベクトル束で,第1チャーン類が1以下のものと,2次曲面上の階数が2のネフなベクトル束で,第1チャーン類が(1,1)のものを,端射線の理論を使って,分類している.研究代表者の大野は,平成26年度において,端射線の理論のかわりに,Bondalの定理を使うことにより,彼らの結果の別証明を与えた.証明の過程で,2次曲面上のネフなベクトル束で,第1チャーン類が(1,1)のものについては,階数が2のものに限らず,一般の場合に分類した.完備な強い意味での例外ベクトル束列という,導来圏の半直交分解に関する事柄を用いて,連接層の局所自由分解を与え,それを,端射線の理論が使われることが専らであった,ネフなベクトル束の分類問題に適用した点に特徴があり,従来にはなかった切り口による研究が可能になるのではないか?と考えている.研究分担者の寺川は,K3曲面と導来圏に関する研究を行った.また,研究分担者の山口は,M, Nが実代数的多様体のとき,多項式で表現されるMからNへの代数的写像(正則写像)のなす空間 Alg(M,N)が,対応する連続写像全体のなす無限次元空間Map(M,N)をどの程度の次元までそのホモトピー型を近似するかの問題(Atiyah-Jones-Segal 型予想)を研究した.とくに, Mが, m次元実射影空間 (m>1)で,Nが非特異コンパクトトーリック多様体の場合にこの近似次元を具体的に評価することに成功した.
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