研究課題/領域番号 |
22540044
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
毛利 出 静岡大学, 理学部, 准教授 (50436903)
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キーワード | 非可換代数幾何学 / 多元環の表現論 / McKay correspondence |
研究概要 |
本研究課題の目的は非可換代数幾何学における主要研究対象である量子射影空間の分類問題と、多元環の表現論における主要研究対象である大局次元有限の有限次元多元環の分類問題とを三角圏を介して関係付け、相互発展することである。昨年度は京都大学の源泰幸氏と共同研究を行い、非可換代数幾何学における研究対象であるAS-regular代数の分類と多元環の表現論における研究対象であるFano代数の分類との間に導来圏という三角圏を介して、密接な関係があることを証明した。今年度はこの関連性の応用として、代数幾何学と多元環の表現論との間の対応であるMcKay対応を非可換化、高次元化することに成功した。古典的なMcKay対応は、アフィン平面をそれに作用する有限群で割ったときにできる特異点を解消したアフィン多様体と多項式環の捩れ群代数とが導来圏を介して対応しているというものであった。今年度の研究成果として、これと似たような対応が量子射影空間とAS-regular代数の捩れ群代数との間にも成立することを証明し、非可換代数幾何学と多元環の表現論との間に当たらな関係を確立した。この結果は4年に一度開催される学会「The 6^<th> China-Japan-Korea International Conference on Ring Theory」において全体講演に選ばれたり、非可換代数幾何学の研究集会「Noncommutative Algebraic Geometry Shanghai Workshop 2011」や「American Mathematical Society Sectional Meeting」に招待されたりして、研究成果を広く海外にも発信することができた。また来年度は非可換代数幾何学と多元環の表現論の双方に関連する研究集会「Linking representation theory, singularity theory and noncommutative algebraic geometry」にも招待されている。これらのことは今年度得られた研究結果が世界でも注目されていることを示しており、当初の研究目的に対して大変成果のあった1年であったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は三角圏を介した代数幾何学と多元環の表現論との間の対応として重要であるMcKay対応を非可換化・高次元化することに成功し、非可換代数幾何学と多元環の表現論との間の新たな関係を確立した。このことより研究目的の達成度に関しておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間に三角圏を介して非可換代数幾何学における主要研究対象である量子射影空間と多元環の表現論における主要研究対象である大局次元有限の有限次元代数との間に密接な関係があることを証明したが、本研究課題最終年度である今年度は、この関係を用いて多元環の表現論の種々の結果・手法を用いて、量子射影直線の研究・分類を完成させることを目標とする。また余力があれば同様の手法が量子線織曲面の研究・分類に応用できるかどうかを見る。
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