研究概要 |
今年度は主に以下の点について研究を進めた。 ●リー群に付随する多重ゼータ関数の正の領域における値を記述するベルヌーイ数およびベルヌーイ多項式の母関数の研究:前年度までの研究によりルート系に付随する多重ゼータ関数の特殊値を記述する母関数の簡単な表示を得ることができている。今年度はこの結果を用いてウィッテンによる一般の単連結とは限らない半単純コンパクトリー群を主束とする平坦接続のモジュライ空間の体積の計算について理論を構築し、具体的な場合として射影ユニタリ群PU(3)において計算を行った。また直交群SO(5),SO(7),および射影シンプレクティック群Psp(2),Psp(3)については具体的なゼータ関数の形を合同式を用いて表した。これら結果により、空間が向き付け可能な場合については理論的にはすべて体積が具体的に計算できることになる。さらに向き付可能でない場合を記述するための関数関係式をいくつか構成した。今後は向き付可能でない場合についての統一的な研究を行う予定である。 ●Wengゼータの関数等式の研究:前年度までの研究によりWengによるルート系に付随するゼータ関数について、これまでA2,A3,A4,B2,G2型についてのみ示されていた関数等式を、ワイル群の構造をもとに統一的な方法により一般ルート系において証明することができた。今年度はこの一般ルート系における関数等式を用いることによって、このクラス全体に対する弱い形のリーマン予想の証明を行った。これによって本来のリーマン予想へ貢献できるのではないかと考えている。
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