研究概要 |
本年度は複素アフィン平面(C^2のコンパクト化としてのHirzebruch曲面】F_nの研究および3次元複素アフィン空間C3のコンパクト化としての超曲面端末特異点をもつFano空間Vの研究を行った.得られた結果は以下の通り: 複素アフィン平面C^2のコンパクト化の研究:平成23年度の研究成果である,C^2のHirzebruch曲面F_nへのコンパクト化に現れる境界因子C-C_1UC_2の分類」について,新たな例を数多く構成し,その例を詳しく考察することにより,アフィン代数幾何学の基本定理であるAbhyankar-Moh-Suzukiの定理の双有理幾何学的別証明についての結果が得られ,論文としてまとめられる部分については,平成23年3月6日に開催されたアフィン代数幾何学の国際研究集会の査読つき論文集に投稿し受理された.また,検証の仮定で証明が不完全であることが判明した部分「境界因子Cの何れか一方は非特異有理曲線である」については現在厳密な証明を試みており,平成24年度までには完成させたい.このような研究方法は申請者独自の方法によるものであり,新たな進展をもたらすことが期待できる. 3次元複素アフィン空間C^3のコンパクト化としての超曲面端末特異点をもつFano空間yの研究:第2ベッチ数が1なるゴレンスタイン端末特異点をもつファノ多様体の構造について,Index(V)=1の時は例は知られているが,その構造が未解明であった.本年度の研究により,第3ベッチ数b3(y)=1と特異点の全ミルナ数μ(V)=4の仮定(位相的仮定)をおけば,特異点の個数は唯一つで,その局所方程式も記述でき,そのようなコンパクト化は従来知られていた種数10のファノ多様体V_18である事を示した.この結果は平成24年3月17日に九州大学で開催された研究集会「高次元代数多様体とベクトル束の代数幾何学」に於いて講演発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C^2のHirzebruch曲面へのコンパクト化の研究については概ね期待通りの結果は得られたが,境界因子の構造決定の段階で論証に欠陥が見つかり,完全な分類にまで至っていない.一方,C^3のコンパクト化については,Milnor数に関する強い仮定の下で構造が決定できた事は進展といえるが,本来はMilnor数に関する仮定は余分であると考え研究を遂行してきたので,この仮定をクリアー出来限り前進とはいえない.
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今後の研究の推進方策 |
C^2のコンパクト化の境界因子の研究については,Morrow氏の分類結果を踏まえ,Hirzebruch曲面の次数を変えない境界因子に沿った双有理改変操作で境界因子の各成分の特異点の重複度を下げるアルゴリズムの存在について研究する.一方,C^3のコンパクト化については並河氏による3次元Fano多様体のsmoothingの理論を応用してコンパクト化についての新たな位相的条件を調べたい.
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