研究概要 |
本研究は代数多様体の分岐被覆の構成・存在に関する問題を研究し,その諸結果を分岐因子の補空間として得られる開代数多様体のトポロジー研究に応用しようというものである,分岐被覆の構成・存在に関する研究のうち,ここで特に着目するのは,代数曲面の2次被覆とsplitting curveと呼ばれる対象である,この研究は2次体の整数論の代数曲面版とも考えられる研究である.従前の研究では,2次曲線に沿って分岐する2次被覆上の既約4次曲線から得られるsplitting curveの研究を行った.この研究成果は今年度Journal of Singularitiesに出版された.この研究では,有理楕円曲面のMordell-Weil群を利用したsplitting curveに関する判定法が大きな役割を果たした.そこで,先行結果を超楕円曲線束のMordell-Weil群に置き換えた一般化について考察を行った.この成果については,現在論文を執筆中である.また,先行結果の精密化も取り組んだ.すなわち,2次曲線に沿って分岐する2次被覆に関しsplitting curveとなる4次曲線の構成法を有理楕円曲面の特別な切断の存在に問題を還元することで与えた.この論文は「Some sections on rational elliptic surfaces and certain special conic-quartic configurations」として現在投稿中である.続いて,splitting curveと二面体被覆研究への応用として,二面体被覆の塔(無限個の二面体群の列)の分岐因子となりうる6次曲線の研究に取り組み,このような6次曲線の特徴付けを与えることに成功した.その成果は2011年1月宇部高専で開催された代数幾何小研究集会-宇部-にて「楕円曲面のbi-sectionの幾何と6次曲線で分岐する二面体被覆の塔」というタイトルで講演を行った.なお,この研究はZaragoza大学(スペイン)のE.Artal BartoおよびJ.-I. Cogolludoとの共同研究である
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