研究概要 |
本年度はまず「有理楕円曲面のMordell-Weil群を用いたsplitting curveの研究」の一般化に関して取り組んだ.すなわち,種数が2以上の超楕円曲線の曲線束をもつ曲面のMordell-Weil群を利用した splitting curveの研究である.この研究の成果は論文A note on quadratic residue curves on rational ruled surfacesとしてまとめAdvanced Studies in Pure Math.に掲載予定である. 2次曲線と4次曲線に関する先行結果を精密化した論文Some sections on rational elliptic surfaces and certain special conic-quartic configurationsは字句を修正したのち,Kodai Mathemataical Journalに掲載された. これらの成果につづいて6次曲線に沿って分岐する二面体被覆の塔に関して研究を行った.この研究の成果については現在論文を準備中である.今年度は二面体被覆の塔について研究を行った際の手法として楕円曲面のsection及びbi-sectionが与える曲線の幾何と二面体被覆の研究について新たな展開があり,本年度の後半は,ほぼこのテーマについて研究を行った.sectionの与える曲線というアイデアは代表者による以前の結果に見いだされるが今年度はより一般的かつ精密的に調べた.その結果,7次のconic-line arrangementに関するZariski pairの明示的な構成に成功した.conic-line arrangement(特に6次以下)はAmram,Garber,Teicher等による補空間の基本群に関する研究はあるものの,6次以下のconic-line arrangementのZariski pairの例は見つかっていない.従って,本研究で構成した例は,conic-line arrangementに関するZariski pairとしては次数が最小のものであることが期待される.この成果については,論文Sections of elliptic surfaces and Zarsiki pair for conic-line arrangement via dihedral coverとしてまとめた.また,2012年3月末にベトナムのダラト大学で開催されたTopology of Singularities and Related Topics IIIにおいて口頭発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
splitting curveの研究については,先行成果の一般化について成功し,これに関する論文も掲載がきまっている.Galois分岐被覆やtorus曲線の研究は,楕円曲面のsection,bi-sectionの幾何と関連している. 今年度は精密な研究を行ったことで,conic-line arrangementに関するZariski pairの明示的構成に成功しており,この点が当初の計画以上のものである.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の通奏低音は「整数論の視点でGalois分岐被覆の構成問題を捉え,これを開代数多様体のトポロジーの研究に応用する」であり,今後もこの変更は行わない予定である.具体的な問題としては,本年度に得られたsectionおよびbi-sectionの幾何学に関する成果をより一般の楕円曲面(本年度の成果はほぼ有理楕円曲面上に限られている)で考察すること,tri-sectionに関する幾何学の考察である.特に後者は2次被覆とsplitting curveの研究とも結びついている.2次体の数論の代数曲面版の構築を目指すうえでは,ぜひ取り組まねばならない課題である.
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