ガウス写像が非分離的となる射影埋込みをもつ射影多様体の分類を目指した。埋込みの像に特異点を許すか否かで様相が大きく異なることが従来の研究で判っており、本年度は主に非特異の場合の研究を行った。さらに分類の対象として最も極端な場合、つまり、性質「(GMRZ)ガウス写像の微分の階数が恒等的に零となる射影埋込みをもつ」を満たす非特異射影多様体に焦点を絞った。深澤知氏(山形大学)および古川勝久氏(早稲田大学)との共同研究を行い、グラスマン多様体やセグレ多様体などの基本的な射影多様体および比較的次数の低い超曲面のGMRZ性について明らかにした。その成果は論文にまとめ発表した。口頭では、2010年7月にIMPA(リオデジャネイロ、ブラジル)で開催された第10回可換代数代数幾何学研究集会(ALGA-2010)で招待講演発表を行った。また、2010年9月にソウル国立大学(ソウル、韓国)の代数学セミナーに招待され講演発表を行った。 その後、古川勝久氏(早稲田大学)と共同研究を続行した。古川氏の大きな寄与により、未解決であった次元の低い3次超曲面のGMRZ性について明らかにすることができた。特に、問題とする射影多様体のブローアップとGMRZ性との関係の研究において大きな進展があった。 一方、桂利行氏(法政大学)からの援助を受けて、海外の数学者2名を含む15名の数学者に講演発表を依頼し、早稲田大学理工学部において2010年11月10日から13日までの4日間、「都の西北代数幾何学シンポジウム」を開催した。これは研究課題に関連する分野の情報収集に大いに役立った。またこのシンポジウムを通じて多くの数学者と研究課題に関して研究打ち合せをすることができ、非常に有意義であった。シンポジウムの様子は報告集として冊子にまとめ、日本全国の主だった大学・数学教室に郵送した。
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