研究実施計画に挙げた「双有理的ガウス写像をもつ非再帰的非特異射影多様体の研究」については、思うように研究は進まなかった。一方、「接線に関する trisecant lemma-tangential trisecant lemma-の一般化」については、結局、形式的冪級数環上の連立微分方程式系を解析することが解決のポイントであると判った。数式処理システム「Mathematica」を用いた計算実験により、ある程度の見通しがついてきた状況である。しかし、当初目標とした特異点に関する条件を完全に外すには至らなかった。 2012年8月にInstituto Nacional de Matematica Pura e Aplicada=IMPA(ブラジル、リオデジャネイロ)へ赴き、IMPA教授のE.Esteves氏およびA.Garcia氏と研究課題に関する議論・情報交換を行った。また、その際、IMPAで開催された「第12回代数幾何学可換代数 研究集会 (ALGA)」にも出席し、上記の「接線に関する trisecant lemma-tangential trisecant lemma-の一般化」についてそれまでに得られていた成果について招待講演を行った。10月の代数幾何学シンポジウム(城崎)では、多くの代数幾何学者と情報交換を行うことができた。とくに、寺杣友秀氏 (東京大学)と尾形庄悦氏(東北大学)とは長時間にわたり集中的に議論できたことは有意義であった。他、7件の研究出張を行ったが、いずれも様々な専門家との議論・情報交換ができ、非常に有意義であった。
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