研究概要 |
平成22年度前半は、高次元双有理幾何学の森理論とその正標数化へのいくつかの試みについて調査を行った。また、Raynaudによる小平消滅が成り立たない正標数の射影的代数曲面構成を一般次元に拡張した、向井茂氏による反例構成法を検討し、特に標準因子が自明になるような3次元射影代数多様体がこの方法では構成できないことを確認した。また、小平消滅の反例構成の鍵となる丹後構造が標準因子が自明な3次元射影代数多様体の上の存在する場合のコホモロジーを計算した。これらの結果の一部はプレプリントサーバーの論文"Raynaud-Mukai construction and Calabi-Yau Threefolds in Positive Characteristics, arXiv : 1010.3499で公表し、現在改訂作業中である。 また平成22年度後半は、正標数の代数多様体上のベクトルバンドルの理論を可換環論研究に導入し、著しい成果を上げたドイツ・オスナブリュック大学教授H.Brenner氏のもとに滞在して議論を重ねると同時に、英国、フランス、ドイツ各地の研究集会、セミナー等に積極的に参加して、ベクトルバンドル、高次元双有理幾何学、数論幾何学に関する最新の研究情報収集に努めた。Brenner教授との議論により、p閉ベクトル場理論の応用など、より幾何学的な理論の研究が必要であることが確認され、次年度の研究の大きな柱とすべきとの認識を得た。
|