研究概要 |
今年度は、以下の2つの論文(ともに単著)を執筆した。 [1] Sliding functor and polarization functor for multigraded modules, Communications in Algebraに掲載決定 [2] Alternative polarizations of Borel fixed ideals,投稿中 この他、実質的に昨年度に執筆した論文で、投稿・受理が今年度にずれ込んだものも有るが、これは次頁に記す。どちらも、受理の直前に若干の改良や修正を行っている。 [1]は、これまで(E.Sbarraの先行する仕事は別として)、単なる組合せ論的な手順として扱われてきた、"(単項式イデアルの)polarization"を、関手として捉え直したもので、具体的な応用も幾つか与えた。導来圏は余り出てこないが、圏論的手法を組合せ論的可換代数に応用するという本研究課題の目的に則ったものである。 [2]は、Borel fixed ideal(斉次イデアルのgeneric initial idealとして登場することで有名な、単項式イデアルの重要なクラス)が、通常とは異なる構成のpolarizationを持つことを示したもので、応用として、単体的複体の代数的シフティングの構成法に現れるsquarefree operationに新たな視点を与えた。本補助金からの助成を受けて、9月に、ベルゲン大学(ノルウェー)のG.Floystad教授を訪ね、情報交換を行ったが、この論文は、その際に得た知見がベースとなっている。今回与えたアプローチはsquarefree operationの従来の扱いより格段に組織的になっているが、(少なくとも安直には)関手として扱えないなど改良の余地も有る。今後の課題としたい。
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