研究概要 |
今年度は、大阪大学大学院特任助教の岡崎亮太氏と共著で、以下の論文を執筆した。 [1]Alternative polarizations of Borel fixed ideals, Eliahou-Kervaire type resolution and discrete Morse theory,(arXiv:1111.6258)投稿中 22年度(以前)に執筆した論文で、出版が23年度にずれ込んだものも有るが、これらは次頁に記す。 代表者の昨年度の論文"Alternative polarizations of Borel fixed ideals"(Nagoya Math. Jに掲載決定)に於いて、Borel fixed ideal Iのalternative polarization b-pol(I)を導入したが、[1]ではその極小自由分解を記述している。Borel fixed ideal Iは,単項式イデアルのクラスの一つで、計算可換代数・組合せ論的可換代数で非常に重要であるが、b-pol(I)は、これを「特殊化」すると(パラメータの取り方に応じて)、I自身にも、そのsquarefree化I^σにもなるもので、従来の理論を大幅に組織化する。Borel fixed ideal I自身の極小自由分解は、EliahouとKervaireによって構成されており、この話題の研究の礎となっているが、その自由分解はb-pol(I)には持ち上がらず、工夫が必要であった。 なお、論文タイトルにもある通り、今回与えた自由分解は、Formanの離散モース理論と密接に関連する。2002年頃から、Welkerとその協力者たちは、単項式イデアル等の極小自由分解を、離散モース理論を用いて構成する(あるいは、極小自由分解に離散モース理論経由で、胞体構造を入れる)試みを行っている。本分野で注目を浴びた興味深い仕事ではあるが、計算が極めて煩雑で、微分写像まで具体的に記述できる例は殆ど無かったところ、今回構成したb-pol(I)の自由分解は、その具体例となっている。 [1]の完成後も幾つかの進展があり、現在は続編的な論文を進備中である。
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