超曲面孤立特異点の位相は、特異点のリンクの位相型とリンクの球面への埋め込まれ方で決定されることが知られている。本研究では「単純K3特異点」の代数幾何学的構造と位相幾何学的構造の関係の解明を目指した。単純K3特異点はある適当な特異点解消によりその例外集合として特異点を持つ正規K3曲面が現れる。このことから、K3曲面の豊かな構造が単純K3特異点の構造に反映されていると予想できる。具体的には、超曲面単純K3特異点の中でも米村氏の分類によって得られている95個の場合とそれ以外の場合において研究を行った。平成24年度の研究成果は以下の通りである。 (1)非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクの微分同相型は、例外集合として現れる正規K3曲面の特異点の構造と関連していることを明らかにした。またオ-リック予想に対する肯定的な部分的解決も得られた。(レフェリーのコメントに従い書き直し中)。(2)非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして現れない実5次元多様体が、非退化な斉次多項式でない多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして無限個実現できた。(受理)(3)Andras Szucs氏 (Eotovos Lorand University、Hungary)、Andras Nemethi氏 (Renyi Mathematical Institute、Hungary)との共同研究において、ある複素3次元超曲面孤立特異点の実5次元リンクの実7次元球面へのはめ込みについて共同研究を行った。(投稿中) 本研究により高次元の特異点の幾何学的構造が明らかになったことは意義がある。また代数幾何学的および位相幾何学的構造の両方の分野にまたがる特異点の構造の関連性を研究することは、特異点の幾何学的構造を深く知るうえでとても重要であると考える。
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