研究課題/領域番号 |
22540061
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秦泉寺 雅夫 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20322795)
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キーワード | モジュライ空間 / ミラー対称性 / 仮想構造定数 / 開弦 |
研究概要 |
本年度は、ミラー対称性の幾何学的構成の応用について目立った成果が得られた。特に、開弦に対するミラー対称性において、これまで閉弦のミラー対称性の仮想構造定数に用いていた、2点付きの多項式写像のコンパクト化されたモジュライ空間の着想を、開弦の場合に拡張することで、開弦の場合の仮想構造定数を留数積分の形で定義することに成功した。これをもとに、一般次元の射影空間の超曲面の場合に、開弦に対するグロモフ―ウィッテン不変量をミラー対称性を用いて計算する手法を与えた。(清水将英氏との共同研究)これまで、開弦のグロモフ-ウィッテン不変量をミラー対称性を用いて計算する手法は、複素3次元のカラビ-ヤウ多様体に限られており、一般次元の場合やカラビ-ヤウ多様体多様体以外の場合は結果が得られていなかった。我々の結果は、射影空間内の超曲面という基本的な例ではあるが、一般次元の場合も、カラビ-ヤウ多様体以外の場合も含んでいるので、大きな進展であるといえよう。この成果は、現在の所arXivのプレプリントサーバ上で発表されている。なお、本年度は、これまでの仮想構造定数とミラー対称性に関する研究成果をブルガリアで行われた国際研究集会IX International Workshop Lie Theory and Its Applications in Physicsにおいて発表した。また、開弦の場合の仮想構造定数を用いたミラー対称性の手法の研究の成果について、首都大学東京における幾何学セミナー、および北京大学のBeijing International Center for Mathematical ResearchにおけるSeminar on Symplectic Geometry and Mathematical Physicsで発表し、専門家たちと討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮想構造定数の幾何学的導出の基礎づけと、その応用についての成果が上がっており、発表の機会も得ているので。
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今後の研究の推進方策 |
ミラー対称性の幾何学的証明の障害となっている留数積分の取り扱いの問題を克服することを目標とするとともに、仮想構造定数を開弦の場合に応用する手法と、高い種数のリーマン面の場へのミラー対称性に応用する手法の開発を目指したい。
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