研究概要 |
1.コンパクト距離空間上の位相力学系が,連続関数のなすバナッハ空間に誘導する荷重合成作用素の研究に於いて,一定の進展を見た.連続全射な位相力学系が誘導する荷重合成作用素が固有値を持つ様なユニモジュラー荷重の全体のなすアーベル群を考察した.この群はunderlying spaceの整係数1次元チェックコホモロジーへの自然な準同型を持ち、かつそのkernelは力学系が定める連続実コバウンダリ-によって表せる。従ってこのアーベル群は力学系の位相的及びエルゴード理論的側面の両方を担っているとみなすことができ,幾つかの典型的な力学系について具体的に計算できる。またこれらの枠組みをコンパクト距離空間上の離散群作用に拡張し,離散群のコホモロジーによって記述することができた。論文は現在準備中である。 2.(i)代数的閉な連続関数環を持つコンパクト距離空間のクラスとC^*環のカテゴリーにおける射影的連続関数環を持つコンパクト距離空間のクラスは一致する(Chigogidze-Draninishikov 2010).この結果の背後にある原理について現在考察中である。(ii)任意の連続関数環に対して代数的閉な連続関数環拡大が存在する(川村2009).この結果をガロア理論の枠組みで捉えることに着手した. 3.当初の計画では22年度の早い時期に研究集会を開く予定であったが、諸般の事情により平成23年3月7-8日「つくばセミナー」(筑波大学)として開催した。セミナーではバナッハ環のスペクトル保存写像の特徴づけ・複素解析的関数空間の合成作用素とそのスペクトル・局所コンパクトアーベル群上の測度環などについての発表・討論が行われた.関数環・関数解析・位相幾何・微分幾何・幾何解析など多岐にわたる研究者が様々な視点から問題を考察した.特に合成作用素についての複素解析的及び力学系的アプローチを合せた共同研究に着手したことは大きな成果だと思う.
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