研究概要 |
本研究の主な目的は、フレッシェ空間(完備距離付け可能局所凸線形位相空間)の単調増加列の帰納的極限であるLF空間をモデルとするLF多様体の理論の構築を目指すと共に、無限次元多様体の応用を図ることである。昨年度、LF多様体の位相構造を研究に有用であろうと期待される箱位相を持つ単体複体を研究したが、非常に悪い性質を持つことが判明した。今年度は、新たな手法を求め試行錯誤を行ったが良い進展が見られなかった。 無限次元多様体の応用に関しては, 関数空間に関して成果を上げることが出来た。無限個の点を含むコンパクト距離空間 X 上の実数値連続関数のなす空間はバナッハ空間でヒルベルト・キューブの擬内部と同相であるので、ヒルベルト・キューブと同相なコンパクト化を持つことが分かるが、それが自然なものとして得られるかが問題となる。以前、上原との共同研究により関数をそのグラフと同一視することにより、関数空間を X と数直線のエンド・コンパクト化の直積空間の冪空間に埋め込み、そこでの閉包がその様なコンパクト化であることを示した。その後、小賀坂との共同研究により X がコンパクトでない場合にも結果を拡張することが出来、今年度はさらに数直線をより一般の1次元局所コンパクトAR の場合に拡張することに成功した。 研究代表者が無限次元トポロジーの研究を目指す院生のために作成し年々加筆・改良を重ねてきたレクチャーノートを出版すべくシュプリンガーに投稿していたが、前半部分を Geometric Aspects of General Topology という1冊の著書として編集し直すことによって、出版が決まり現在印刷中である。これも大きな成果の一つであるが、今年度は出版のためにかなりの時間と労力を費やした。また、これまで出版予定であった論文が今年度中に出版され、連携研究者も多くの様々な成果を上げることができた。
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