研究概要 |
本研究では、トポロジーの主な研究対象であるコンパクト距離空間および可分距離空間とその上の連続写像の力学的・幾何学的性質を総合的に研究し、位相力学系に現れる複雑な不変集合の幾何学的構造を明らかにすることである。一般に、連続写像の力学系は複雑なトポロジーを導くことが知られている。今回の研究では、連続写像の彩色問題を位相力学系との関連から集中的に研究した。この方面の研究では、古くはLusternik-Schnirelman-Borsukによる次の定理が知られている:n-次元球面上の任意の(n+1)個の閉集合からなる被覆には、antipodal points を含む閉集合が少なくとも1つ存在する。この定理は、その後Erdos, Katetov, Frolic, Van Douwen らによって連続写像の彩色(色付け、coloring)問題として定式化され研究が続けられてきた。また、彩色数(coloring number)と位相次元との関連の研究について、Arts, Fokkink, Vermeer, Buzyakova, Chigogidzeなどの優れた研究が知られている。研究代表者は、位相力学系的な発想からeventually coloringの概念を新たに導入し、この方面の研究を革新的に発展させる基本的定理を証明した(J. Mat. Soc. Japan, Topology Proc. Topology Appl.で研究成果を発表)。例えば、2ー次元球面上の任意の連続写像に対しては、16 iteration(繰り返し)に対して彩色数は2となることがわかる。また、一般のn-次元位相力学系に関し、その周期点の集合の位相次元がゼロ次元以下であれば、その力学系をゼロ次元の力学系の2の冪fiberのsemi-conjugateで表現できることを証明した(Topology Appl.)。
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