リーマン球面から3点を除いて得られる図形Mの基本群Pの群環を、簡約イデアルにより完備化して得られる非可換代数は2変数の完備自由代数と同型になり、その同型写像は、Magnus展開と呼ばれる。最も標準的なMagnus展開の係数は、Foxの自由微分により計算きれることが知られている。平成22年度の研究では、M上の微分形式を逐次積分することにより得られるMagnus展開の係数は、オイラーの多重ゼータ値により表されることを明らかにした。また、さらにこれをリーマン球面からn点を除いて得られる図形(nは3以上)Nの基本群Qについて一般化し、N上の微分形式を逐次積分することにより得られるMagnus展開の係数は、多重ディリクレL関数の特殊値により表されることを示した。さらに、群GがQに同型として作用しているとき、Qの降中心列を用いてGに減少フィルトレーションG(i)が導入される(Johnsonフィルトレーション)。このとき、次数付き商G(i)/G(i+1)から、Nの1次ホモロジー群のテンソル積への準同型(Johnson準同型)が定義されることが知られている。我々は一般にG(i)/G(i+k)から、(n-1)変数の完備自由代数を係数とする形式的乗法群への商への捻れ準同型を定義し、その係数を多重ディリクレL関数の特殊値を用いて表した。(我々の結果をk=1に適用すると、Johnson準同型が得られる)
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