平成21年度までに行ってきた研究を更に発展させて、平成22年度では曲線の運動のハミルトン系としての特徴付け、特にユークリッド平面または複素双曲線上の閉曲線のなす空間に導入される複数または無限個のプレシンプレクティック構造について考察した。 可積分な運動は曲線の場合のみならず、曲面についても考えることができる。例えば、3次元ユークリッド空間内の2次元トーラスの運動で、変形ノビコフ・ベセロフ方程式に対応するものが知られており、このとき平均曲率の積分、すなわちウィルモア汎関数は運動の保存量となっている。平成22年度では、その他の曲面の運動についても考察するために、複素化された球面内の曲面に対して複素直交網による径数付けなる概念を導入し、このように径数付けられた曲面の基本的な性質および具体的な例を与えた。 アファイン微分幾何の一種である中心アファイン微分幾何において、平坦な中心アファイン計量をもつ中心アファイン超曲面に対する積分可能条件は位相的場の理論における結合性の方程式と同値であることが知られている。一方、中心アファイン極小曲面は中心アファイン計量の面積積分の停留曲面として得られる中心アファイン曲面であり、固有アファイン球面の可積分な意味での一般化ともなることが知られている。平成22年度では、以前から知られていた、あるいは研究代表者自身により平成21年度以前に見つけていた、平坦な中心アファイン極小曲面の具体的な例について対応する結合性の方程式の解を求めるなど、中心アファイン曲面に関連することについて考察した。これらのことに関しては、今後発展させていく予定である。
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