微分可能写像の特異点理論を用いて、多様体のトポロジーを研究した。高次元トポロジーと低次元トポロジー、微分トポロジーと代数的トポロジーを行き来する研究を目指した。特に、多様体の埋め込み・はめ込みの幾何的様相についての研究を行い、いくつかの成果を得た。 当該年度は曲面結び目の図式のローズマン変形の独立性についての共同研究を行い、成果を得た。具体的に言えば、同値な2つの有向球面結び目の図式であって、ともにブランチ点を持たないが、相互に変形する場合にはその過程に必ずブランチ点が生じる(すなわちブランチ点の消滅・生成を引き起こすタイプのローズマン変形が必要となる)という例を作った。種数の高い曲面の結び目の場合には同様の例がいくつか知られていたが、球面の場合には初めての例である。我々の結果は実際にはこのような図式の対を量産する方法を与えている点で強力である。また、証明に球面の裏返しに現れる四重点の奇数性が用いられている点が興味深い。 この結果を東京学芸大学の田中心氏との共著論文としてまとめ、ICM2014のサテライト集会や日本数学会を含む国内外の研究集会で(主に田中心氏を講演者として)公表した。プレプリントとしてオンラインには公表済みであるが、査読課程に長い時間を費やしており、ジャーナル論文としての公表にはまだ至っていない。 この他、当該年度までに得られた研究成果をさらに発展させるべく新たな研究計画を立て、平成27年度からの科学研究費補助金基盤研究(C)への応募を行い、首尾よく採択された。これは非常に有難いことであり、心から感謝している。
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