本研究を通じて、以下の研究成果をあげることができた。 リーマン多様体上の2調和写像の研究を行った。 そこではリーマン多様体上の調和写像を与えた時、その多様体と実直線の直積上のリーマン計量に共形変形を行い、調和写像から2調和写像を誘導できるか否かを考察した。 その結果、多様体の次元が 3 または 4 の場合には、そのような共形変形が存在すること、次元が 5 以上の場合には、そのような共形変形は存在しないことを証明した。 この問題は、3階非線形常微分方程式の正値解の存在に帰着される。 また、平面の有界領域において、二値の熱伝導率をもつ媒体が存在するときに、その熱伝導性を最適化する問題を考察した。 この研究では、そのような状況において、ラプラシアンの第一固有値を最小化または最大化する熱伝導率関数を求めることを考えた。 すなわち、二種類の物質が平面上に配置されていると考え、その配置とラプラシアンの第一固有値との関連を考察した。 この問題は、解析的に解くことが極めて困難であると考えられ、本研究では、数値計算により、最適配置を求めることを考えた。 その結果、種々の境界条件の下で最適配置を計算した。 さらに、有限長カーボンナノチューブの "length Index" の定義に関する研究を行った。 カーボンナノチューブの数学的指標として、chiral index が広く知られているが、カーボンナノチューブの「長さ」を測る指標は、これまでには知られていなかった。 そこで、その指標となるべき「長さ方向にいくつのベンゼン環が存在するか」を数値化し、length index を定義することができた。 また、この研究では、単にそれを定義するだけでなく、具体的なカーボンナノチューブの結合状態を与えることで length index を計算するプログラム(ウェブアプリケーション)を開発した。
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