研究課題/領域番号 |
22540077
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森吉 仁志 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (00239708)
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キーワード | 幾何学 / 位相幾何学 / 非可換幾何 / 指数定理 / K理論 / エータ不変量 / 葉層構造 / Godbillon-Vey不変量 |
研究概要 |
本研究の目的は 1)非可換幾何学の枠組に合致するような指数定理の拡張,すなわち「非可換化」を意識した指数定理の再構築; 2)非可換化された指数定理を用いて幾何学や弦理論の具体的研究に資すること; にある.とくに a)葉層多様体・力学系・エルゴード的群作用から派生する作用素環が導く指数定理の解明; b)シンプレクティック幾何から生ずる非可換性・量子性と指数定理の関連性を明確化; c)スペクトル不変量(エータ不変量,Ray-Singer torsion等)が関与する指数定理の精密化; d)コサイクルで捩ったC^★群環やGrebeが関与するTwisted Index Theoremの展開と応用; e)境界付多様体・軌道体上で非可換性が関与する指数定理の確立; を具体的目標としている.これらの具体的目標に鑑み、今年度は以下の結果を得た.まずAtiyah-Patodi-Singer指数定理を非可換幾何の枠組で拡張し、この枠組を高次元の葉を持つ境界付葉層多様体に適用して、Godbillon-Vey類が関与する葉層多様体上の指数定理を確立した(P. Piazzaとの共同研究).この定理では、葉層構造(エルゴード作用)を持つ境界付き多様体を扱い、葉層構造に沿う楕円型作用素のスペルトル不変量(エータ不変量)と葉層二次特性類の関連性を明らかにしており、殊に境界の近傍における解析においてはハイゼンベルグ量子化(シンプレクティック幾何)が強く関連し、上記目的に合致する指数定理を確立できたものと考える.そしてこの結果を論文として発表し、加えて発展的結果に関する論文も完成させ、現在投稿中である.また非可換幾何学の枠組を用いて、Godbillon-Vey類の定義域(葉層構造の微分可能性)の拡張に関する新しい結果も得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度以降の研究計画としていた(1)非可換幾何学の枠組みによる指数定理の再構築(2)非可換多様体への具体的応用に関し、Godbillon-Vey類が関与する葉層多様体上の指数定理を確立したことなどによって、計画が順調に進展していると考えるため.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究の最終年度であるため、実施計画の最終段階に進む.これまでに充足した周辺分野の知識を基盤として研究の完成を目指す.従って研究討論から研究の完成へと移行する.このため非可換幾何の専門家が多数参加する研究集会に参加して研究討論を行い、またレビューを受ける.この機会に研究成果の完成度を精査し、同時に応用面での妥当性を最終的に判断する.
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