研究課題/領域番号 |
22540078
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
望月 拓郎 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (10315971)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 調和バンドル / 半無限ホッジ構造の変動 / ストークス構造 / ナーム変換 / インスタントン / 混合ツイスターD加群 / ホロノミックD加群 / ベッチ構造 |
研究概要 |
調和バンドルの理論の応用として、M. GuestとC. S. Linによって研究されていた2次元戸田格子の実数値解の分類を行ないました。さらに、戸田格子の解に同伴する半無限ホッジ構造の変動のストークス構造をパラボリックウェイトと結びつける明示的な公式を得ました。これを用いて、その半無限ホッジ構造の変動が整数性を持つための判定条件を与えました。量子コホモロジーなど物理から現れ得る半無限ホッジ構造の変動のうち、最初に考えるべきクラスのものの粗い意味での分類を与える結果であり、興味深いものだと思われます。また、調和バンドルに同伴する半無限ホッジ構造の変動やそのストークス構造を明示的に計算するのは、一般にはとても難しいことであるため、具体的によくわかる非自明な良い例が得られたという点でも非常に意義があります。この研究結果はプレプリントとしてarXiv:1301.1718に公開されています。 これとは別に、昨年度に引き続いて二重周期インスタントンの研究を行ない、楕円曲線線上のワイルド調和バンドルと二重周期インスタントンの間のナーム変換による対応を確立しました。これは、O. BiquardとM. Jardimによる結果を大きく一般化するものであり、この方向では当面で期待し得る最も一般的な結果といえます。また、特異性の変換についても、フーリエ変換の停留点公式の類似の結果がえられました。これらの結果はプレプリントとしてarXiv:1303.2394に公開されています。 以前に書いた、混合ツイスターD加群についてのプレプリントと、ホロノミックD加群のベッチ構造に関するプレプリントの改訂を行ないました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調和バンドルの理論に関連して、新しい展開が得られ、その有用性が示されてきていると思います。。戸田格子、半無限ホッジ構造の変動、ナーム変換などが調和バンドルと関連があること自体は明らかですが、具体的な応用が得られたのは意義のあることでした。 また、過去のプレプリントの改訂も順調に進み、投稿できる段階に近付きつつあります。
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今後の研究の推進方策 |
半無限ホッジ構造の変動の小林-ヒッチン対応に関連してなされるべきことを整理していきます。またなるべく早く、混合ツイスターD加群のプレプリントとベッチ構造のプレプリントを投稿できるように作業を進めます。二重周期インスタントンについての研究では、無限次元のストークス構造に関する部分をまだプレプリントにしていないので、この整理を進めます。また、二重周期インスタントン以外にも、例えば周期モノポールのナーム変換は調和バンドルと直接関係しています。この方面では、Cherkis-Kapustinによる結果を、さらに精密なものにしていくのも興味深いことだと思われます。
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