研究概要 |
多様体上の与えられた幾何構造を保つ微分同相写像の成す群の位相的・代数的性質の解明は,幾何学の研究において重要なテーマの1つである。本研究では,非コンパクトC^∞多様体Mの微分同相群D(M)や体積形式wを保つ微分同相写像の成す群D(M;w)のコンパクト-開C^∞位相・Whitney C^∞位相・一様位相等の下での位相的性質に関して考察している。 国際会議Dubrovnik VII--Geometric Topology, Dubrovnik, Croatia (June 26-July 3, 2011)では,題目「Topological properties of diffeomorphism groups of non-compact manifolds」の下で,コンパクト-開C^∞位相に関して研究代表者が得た結果及びWhitney C^∞位相に関して連携研究者酒井・嶺・ Banakh氏との共同研究によって得られた結果を対比しながら包括的な解説を行った。 Whitney C^∞位相に関する主要な結果として,非コンパクトC^∞多様体Mの微分同相群及びコンパクト台を持つ微分同相の成す部分群の組(D(M),D^c(M))は,1_2の加算box積・small box積の組と局所同相になる。特に,部分群D^c(M)はパラコンパクト1_2×R^∞多様体になる.位相多様体の場合も,Mの次元が2以下の場合は同様の結果が成り立つ(3次元以上の場合は未解決予想)。また,部分群D^c(M)は位相群のカテゴリーの中で自然に順極限となっている.これは,順極限位相の下でD^c(M)が位相群にならないことと対比される(共著出版論文2011)。さらに,Mが2,3次元の場合には,コンパクト多様体の微分同相群のホモトピー型に関して知られている結果からD^c(M)のホモトピー型に関する結果も得られている。また,無限型曲面に対して,コンパクト台を持つ同相写像の群から定義される写像類群の研究も進んでいる。(研究会における口頭発表)。 さらに,コンパクト多様体の被覆空間上の一様同相の成す群の一様位相の下での位相的な性質の研究も進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(体積保存)微分同相群のコンパクト・開位相,Whitney位相の下での位相的性質の研究を,これまでの研究を基礎にさらに推進する。一方,一様位相も同相群に対する基本的な位相の1つであるが,その性質はこれまでのところあまり解明されていなかった。共同研究により既に実数直線の一様同相の成す群及びその典型的な部分群の一様位相の下での位相型を決定している(共著出版論文2011年3月)。この研究の発展として,n次元ユークリッド空間や,さらにコンパクト多様体の被覆空間となる非コンパクト多様体の一様同相の成す群についての研究を前進させることができた。H24年度は,この研究をさらに発展させ,微分同相群の場合に一様C^∞位相の基本的な性質やコンパクト・開位相,Whitney位相との相違を明らかにする。
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