当該年度は結び目の安定同値類の幾何学的特徴と不変量の関係及び結び目の安定同値類の分類表の研究を行った。 結び目の安定同値類を表す閉曲面上のlink diagramの中で、その曲面の中で最小の(オイラー)種数を安定同値類の最小種数と呼び、これを決定することは大きな課題である。2005年に向きづけられた閉曲面上の結び目の安定同値類(virtual link)の不変量に拡張されたJones多項式をもとにsurface state model(link diagramから導かれる曲面上の閉曲線の集合)を利用してsurface bracket 多項式を、Dye、Kauffmanが導入した。さらに彼らはsurface state modelとlink diagramの種数の関係を示していた。 一方、2009年にMiyazawaはvirtual linkの不変量,宮澤多変数多項式を定義していた。 同時期にDye、 Kauffmanも類似の不変量を導入しarrow多項式と呼ばれている。研究代表者は宮澤多変数多項式を向き付け不可能な閉曲面も含んだ結び目の安定同値類(twisted link)にまで拡張していた。それを拡張宮澤多項式と呼ぶ。当該年度は、拡張宮澤多変数多項式をもとにsurface bracket多項式を導入し、このsurface state modelの閉曲線と拡張宮澤多項式の変数の関係を明らかにした。この結果は、2012年のポーランドでの国際会議、2013年の東京での国際会議で発表した。 また、結び目の安定同値類の分類表を作成するソフトウェアと拡張宮澤多項式不変量を計算するソフトウェアを作成して、分類表を構成した。この成果は現在ホームページで公開している。今後、研究集会で発表する予定である。
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