代表者の枡田は、トーリック多様体論をトポロジーの立場から展開し、トーリックトポロジーという新しい分野の開拓を進め、これまでトーリック多様体(もっと一般にトーラス多様体)のトポロジーを(多重)扇などを用いて組合せ論の言葉で記述することを主に行ってきた。代数幾何におけるトーリック多様体のトポロジー版として、1990年頃に導入されたDavis-Januszkiewiczによる擬トーリック多様体と2000年頃に服部‐枡田により導入されたトーラス多様体があったが、どちらも一長一短があり、トーリック多様体の正統なトポロジー版とは言い難かった。枡田は、石田、福川との共同研究で、位相的トーリック多様体と位相的扇の概念を導入し、それらの間に1対1対応が存在することを示し、トーリック幾何の基本定理の拡張を得た。また、石田との共同研究で、擬トーリック多様体が複素構造を持てはトーリック多様体であることを示し、Buchstaber-Panovの本(2002年出版)にある問題を否定的に解決した。 実トーリック多様体のトポロジー版として、2のn乗個のn次元単純凸多面体を境界で貼り合わせてできるsmall cover という多様体があるが、Li YU、黒木慎太郎と共同で、正曲率、負曲率、平坦曲率をもつsmall cover の特徴づけの研究を行った。また、J.B.Kimとの共同研究で、iterated S^1束のトポロジーを研究した。 トーラス群作用が有効に使われトーリックトポロジーと似た思想をもつ同変シューベルトカリキュラスをトーリックトポロジーの立場から研究した。特に、石田、福川との共同研究で、旗多様体の同変コホモロジーをGKMグラフから全く組合せ論的に求めた。 平面の格子点の数え上げの定理であるピックの公式、12点定理の一般化を東谷との共同研究で行った。また、格子を題材とした本を、福川と執筆した。
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