研究概要 |
研究代表者は、今年度2編の論文を出版した。一つは「The elliptic Apostol-Dedekind sums generate odd Dede kind symbols, Math.Ann., 346(2010), 769-794」で、これはApostol-Dedekind sumsのelliptic analogueとよべるものを研究している。この和は同時に保型形式とも考えられる。この和のもっとも重要と思われる性質はタイトルにあるとおり、多項式相互法則をもつ一般デデキント和の母関数になっている点である。すなわちこの和のパラメータの一つを変えることにより得られる一般デデキント和は、多項式相互法則をもつ一般デデキント和のなすベクトル空間の基底をなす事がこの論文で証明されている。一般デデキント和にはいくつかの重要な性質、たとえば保型形式のなすベクトル空間との間の自然な1対1対応などが知られているが、具体的に和の形を得ることは難しかった。今回は古典的なデデキント和の形に近い形で表現できたので、今後の一般デデキント和の研究に大いに役立つものと期待している。 もう一編は「Twisted Hecke L-values and period polynomials, J.Number Theory, 130(2010), 976-999」でYifan Yangとの共著である。この論文では、従来知られていた保型形式の周期多項式の公式を、ひねられた保型形式の周期多項式の公式に一般化した。公式にはひねられたベルヌーイ多項式が自然に現れる。この公式は、いくつかのひねられた保型形式が一次独立かどうかを判定するのに活用できる。すなわち対応する周期多項式の族が一次独立ならばもとの保型形式は一次独立であるが、周期多項式の族の一次独立性は初等的な方法で示せる場合があるからである。応用として、ひねられた保型形式のなすベクトル空間の基底の構成が考えられる。 研究分担者は絡み目の局所的変形に関する研究を継続中であり、また結び目関係の研究集会に出席し最新の研究成果の吸収に努めている。今後の結び目不変量と保型形式の研究に生かしていくつもりである。
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