昨年度は自明結び目のアーク表示で、n本のアークを持ち、ほどくまでにnの1次式の回数のエクスチェンジ変形が必要であると予想される具体例を見つけた。絡み目のアーク表示は、絡み目を水車の各羽根と「軸に両端点を持つアーク(曲線分)」で交わるように配置したものである。水車型の図形を「開いた本」と思い直す。各羽根はページとなり、各アークにはページ番号が付される。結び目に沿って進んだときのアークたちのページ番号を並べて得られるサイクリックな数列をアーク列と呼ぶことにする。この準備の下に、マージできるための条件を考える。マージ変形にはアーク・マージとヴァーテクス・マージの2種類の操作がある。アーク・マージが適用可能であるためには、隣り合う番号(iとi+1(mod n))がアーク列上でも隣り合う状態になっている必要がある。仮に、これを条件Aと呼ぶことにする。条件Aを満たしていなければ、すぐにアーク・マージ操作を行うことができないことになる。同様にヴァーテクス列を定義し、条件Aを考えることができる。条件Aを満たさないアーク列とヴァーテクス列を組み合わせて得られるアーク表示たち全てを考える。それらから自明結び目を表すものだけを取り出して、ほどくためにエクスチェンジ変形が必要な自明結び目のアーク表示が得られる。実際に、この方法をアーク7本の場合に実行して、そのようなアーク表示を全て求めた。 その他、林美和との共同研究で、2成分自明絡み目の射影図を交差点無しにするために必要なライデマイスター変形の回数をX型結び目解消操作を用いて評価できることを示した。
|