研究概要 |
Proc.Amer.Math.Soc.から2010年1月に発表されたHamada-Shiohamaによる定理では,正則断面曲率一定な射影空間内の完備実超曲面の大域的形状を決定した.多くの研究者が仮定した主曲率一定の条件を排し、我々は完備性のもと型作用素及び法ベクトルに関する曲率変換の固有空間の一致条件からこの結果を導いた点は重要である.この成果を正則断面曲率一定な双曲空間内の完備実超曲面に対して試み,完備実超曲面が距離球面,ホロ球面,及び全測地的超平面の周りの平行超曲面である事を印南信宏・新潟大教授、糸川銚・福岡工大教授との共同研究で完成させた.全測地的層構造の特徴を利用する方法は斬新で,証明の最終段階で主曲率一定が示される.本研究で展開される完備実超曲面の議論は双曲空間の点,無限遠点、超平面からの距離関数(特殊なモース関数)の正則値で与えられる等位超曲面である. 平成21年度迄の研究課題『リーマン多様体の放射曲率と位相』で重要であったモース関数の役割を距離関数に付与するアイデアを発展させて,異なる2点からの距離の和、差をモース関数と見なし,新しい展開が開けた.リーマン多様体の切断跡と共役跡に関するRauch予想は否定的な場合には道の空間の最小値の次の臨界値が求まる事を証明した.この考えはフィンスラー曲面上のGauss-Bonnet理論に適用可能で,フィンスラー曲面の接空間に点付きハウスドルフ収束として得られる接錐面が点毎に異なるものはリーマン空間とは本質的に異なるフィンスラー曲面が発見される可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の前段階『リーマン多様体の放射曲率と位相』を発展させて本研究を始めたが,Rauch予想に関する展開及びフィンスラー曲面の研究の特別な実例を射影空間や双曲空間内の完備実超曲面で与えたと考えられるだろう.実際、切断跡の構造がRauch予想の研究から解明された面もある.双曲空間相の完備実超曲面の固有値の数を増やして行けば,超曲面上のモース関数の臨界点の個数も増え,切断跡の構造も複雑化して行く事が予想される.従って本研究は超曲面から視野を拡げてフィンスラー空間論及び距離関数の臨界点集合の研究を含む形で進めて行く事になる.
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